車なら「いつかはクラウン」言うけれど(前編)

              

ある日、おとんから電話が入った。
「わしなあ、事故ったんや」

なぬ?!

とりあえず、事故の状況や怪我の具合を聞く。

「怪我はなあ、ちょっとムチウチになったけど、たいしたことないんや」

「でもなあ、車がとうとうアカンようになってもうてなぁ・・・」

詳しい事故の状況はこんなもんやった。

信号待ちでとまっていたおとんの車に、わき見運転してたのか、
はたまたスマホ弄くってたのか、あるいは、居眠りしてたのか。

後続車が、ドン!と突っ込んだそうな。

いわゆる、「オカマホラレタ」事故である。

幸い、おとんの怪我は軽いムチウチ程度で済み、衝突してきた車が全面的に非を認めたので、
おとんは事故の責任はとらずにすんだ。

まあ、そりゃ~そうやろう。

まともに、前を見て走ってたら、信号が赤だというのは認識できたはずやし。

警察署で、事故にあったおとんの愛車を見せてもらった。

車体後部がめちゃくちゃに破壊されている。
いったい、どんなスピードで突っ込んだんや、後続車。
よくこれで、軽いムチウチ程度で済んだもんや・・・。

今は亡きおかんが、おとんのことを守ってくれたんやろうか。
そんな気がしてしまうほどの、派手派手しい破壊っぷり。

まあ、怪我がたいしたことなくてよかった・・・。

しかし・・・。

怪我はたいしたことなかったけれど、おとんにはある大ダメージが襲い掛かった。

私が住んでいるのはS玉県の山に近い、イナカである。
イナカはイナカでも、一応、鉄道がそれなりに走っているので、都会に行くのも何とかなる。
車がなくても、なんとか生活できないことはない。

しかし!!!

おとんの住んでいるのは、もっとイナカ、はっきり言ってドイナカであ~~~る!!!

電車は1時間に3~4本しか走っておらず、バスなどの公共交通機関も、運転間隔がとってもさびしい。

車がないと、生活がヒジョ~~~に不便な地域なのである。

とりあえず、車体後部ぐちゃぐちゃの車を、修理できないか、わが兄弟が懇意にしている、
自動車販売会社に聞いてみた。

「これは・・・」

自動車販売会社のヒト、しばし絶句。

「廃車にしたほうがいいですよ・・・修理も、100万以上はかかるでしょうし・・・」

おとん、泣く泣く廃車を決意する。

「車ないと困るんやけど・・・」

そんな風におとんが困っていたら、おとんの知り合いのとある会社経営者が、厚意でこんな提案を。

「私が乗らなくなった車が1台余っているので、それをお譲りしますよ」
「車ないと不便でしょうし」
「車検切れてますけど、大事に乗ってたから、そんなにかからないと思いますよ」

その厚意に素直に甘えたおとん。

知人会社経営者から、車体本体10万円で譲り受けたのだった。

さて、おとんからまた電話が。

「わしの新しい車見せたるわ~家来いやぁ~」

どれどれ・・・。

おとんの家に行ってびっくり!

そこにあったのはなんと・・・?! (後編に続く)